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 SS > [動かない時計]2006/08/04(金)
 今から少々未来、といって、人が生まれて死ぬには十分すぎるほど先の未来、どこかそのへんに街がある。未来といっても、ここは地方。文明の進歩などSFチックな雰囲気はかけらも味わえぬクラシックな街。一応、小さな家々や商店で敷き詰められ、それ相応にはにぎやかしである。街の中央には、なんとかスペースを確保して作ったような小さな広場があり、なにとはなしに外に出たらしい壮年の男がぶらぶらしていたり、今日も今日とてわけもなくベンチに座るご老人がいたりする。他にも一人か二人か、あるいはもう少しかが、立ち止まっていたり、歩いていたりと、特に用もなく、のんびりと、昼と夜のあいだの、といって夕方というのも何か違う時間帯を過ごしていた。
 ぼけーと立ち止まったままの男もその一人だった。暇人というほど暇なわけでもなく、所用の帰りで、あとは家に戻って食事を作るだけ、否、作らなくてはならないはずなのだが、先ほどからぼんやりと広場の中央を眺めていた。
 高さも、幅もない、時計台である。時計台というにはあまりにおこがましいような、時計台である。広さは1メートルもなく、高さはまさにセンチ単位の時計台。広場の時計台といったらどことなくクラシックで大きく、風格のあるイメージばかりだが、これはなんといえばいいのやら、コメントに困るような時計台である。ただ、一応、『台』があって、そのうえに『時計』があるんだから、イメージだのお約束だの置いといて、形式的に『時計台』と表現する。モルタルでかたどられた台座に備えられた時計。男はしばらくの間、それを眺めつづけていたのだった。一分、ニ分……。ややあって、後ろから声がかかった。
「ああ、もしかしてあなたもこの時計のことをご存じないのですか」
 男が振り向くと、先ほどベンチに座っていた老人が、杖を支えに目の前に立っていた。
「時計……?」
「ふうむ、やはりそうか、最近の人は知らないのか……」
 老人はぽつりと呟いて、背を丸めた。
「時計……、初めて見る物ですが、昔の時計か何か……?」
 てっきり前衛的なアートかと、と一人呟く男に、老人は言った。
「時計、まごうことなき時計ですとも」
「……にしては、動く気配がありませんけど」
「いいや、確実に動いております」
「なるほど」
 男は、この老人はボケているのかもしれない、と同情を覚えたのか、声が少し柔らかくなった。
「信じておりませんな? そうですね、」
 老人は時計をちらと見ると、おおよその時間を言った。
 男は携帯を取り出して時間を確認すると、しばし黙り込んだ。
「……なるほど」
 そう唸って、再び黙り込んだ。
“偶然、ということも考えられるが――”
 男に背を向け、時計を見つめている老人にも、男の考えていることは手にとるようにわかった。だからこそ短く言った。
「昔の人は面白いことを考えるものです。昔もばかにするものじゃあ、ない」
 ふふ、と笑って。
 その言葉と笑みがどうも、年寄りをばかにするな、と言っているようで、男は耳がいたかった。
「これは、……この時計は、なんというのですか」
 だんまりをやめ、男は素直に聞いてみた。年長者も時には強いもんだと思って。
「これは、ヒドケイというのです」
 老人はほがらかに微笑んで男を見た。
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